春になってあちらこちらで桜が咲き始めると、そわそわとしてお花見に出掛けたくなりますね。今年は新型コロナウィルスの影響でお花見の宴会中止となり、残念ですが、人混みを避けて近所に静かに咲く桜のお花見をするのも良いと思います。お花見は、奈良時代の貴族が始めた行事と言われており、当初は中国から伝来した梅の花を鑑賞するものだったようです。
平安時代に入り、お花見の花が梅から桜へと移り変わっていきました。桜の花でのお花見の起源は、「日本後紀」によると、嵯峨天皇が催した「花宴の節」という宴であると記されています。以前は貴族の行事だったお花見ですが、鎌倉時代に入ると武士階級にも広がっていきました。有名なのは、豊臣秀吉の「吉野の花見」と「醍醐の花見」ではないでしょうか。「吉野の花見」は、徳川家康や前田利家、伊達政宗などの名だたる武将や茶人・連歌師など総勢5千人にも及ぶ参加者のお花見だったと言われています。「醍醐の花見」は、お花見のために700本の桜が醍醐寺に植えられ、豪華絢爛に茶会や歌会などが催されたようです。お花見とセットで親しまれる「三色団子」も、このときに振る舞われたのが最初だそうです。
お花見が民衆に広まったのは、江戸時代に入ってからです。桜の品種改良も盛んに行われるようになり、現在、ポピュラーな品種「ソメイヨシノ」もこの時代に作られたそうです。この頃から桜の名所として名高かった「上野の山」は現在も、上野恩賜公園として毎年多くの花見客を楽しませてくれます。
貴族が花を愛でるお花見を楽しんでいた時代、農民の間にも、お花見は行われていました。しかし、貴族のお花見とは異なり、豊作祈願の神事として行われていたようです。桜には、春に山から降りてくる「田」の神様が宿ると信じられており、桜の花の咲き方で農作物の収穫を占ったり、開花時期に合わせて稲の種まき準備を行ったりと、農民にとって桜はとっても大切なものでした。春に、緑の葉より先に桃色の花を一斉に咲かせる桜は、人々にとって、神秘的で神々しく見えたのかもしれません。
全国の桜のなかには、「日本三大桜」と言われるものがあります。日本全国、桜を鑑賞できる場所は多数ありますが、その頂点と言われる桜を見に行ってみたいものです。
「日本三大桜」
三春滝桜(福島県) 樹齢1000年超
山高神代桜(山梨県) 樹齢約1800~2000年
根尾谷淡墨桜(岐阜県) 樹齢1500年超
「日本三大桜の名所」
弘前公園(青森県)
高遠城址公園(長野県)
吉野山(奈良県)
「日本三大夜桜の名所」
弘前公園(青森県)
高田城公園(新潟県)
上野恩賜公園(東京都)
「みちのく三大桜名所」
弘前公園(青森県)
角館(秋田県)
北上展勝地(岩手県)
3密を避ける意味から、現地でお花見の願いは叶いませんが、ネットで紹介されている、これら素晴らしい桜の名所の写真を家で眺めて見ているだけで十分にその美しさは伝わると思います。