水稲の田植え作業は終わり、当社では、大豆生産の作業に入りました。今年も約300haの畑に8品種(岩手みどり・タチナガハ・里のほほえみ・おおすず・リュウホウ・黒平・黒丸くん・青丸くん)の大豆を作付けします。大豆の種をまく(播種(はしゅ)と言います)作業の前工程に耕起(こうき)作業と整地砕土(せいちさいど)作業があります。農作業というと「土を耕す」作業を想起するほど、農業につきものの作業です。しかし、田畑はむやみやたらに耕せばよいというわけではありません。当然ですが、耕起には目的があります。目的に応じて実施する作業はそれぞれ同じではありません。それだけに耕起に使用する農業機械も様々な種類があります。耕起の目的は
①土の膨潤化
②除草
③天地返し
④堆肥の鋤き込み(団粒構造の実現)
⑤乾燥防止
⑥鋤床の破砕
などです。耕起のために使うプラウやロータリーはそれぞれ耕起を行うという意味では共通していますが、その機能はそれぞれ全く同じではありません。したがって、使用する農業機械はどんな目的で行う耕起であるかを理解した上で選択する必要があります。
プラウは日本語でいうと、鋤になります。プラウ耕起は、土を天地返しして起こす作業です。プラウの特徴は、下層の土を表面に出し、表面の土、草、わらを埋没させる反転効果と、土を砕いて生育に適した大きさにする破砕効果にあります。反転効果によって表面の雑草や過剰養分、病原菌などは下層に埋没し、下層のフレッシュな土が表層に現れます。破砕効果によって土層は適度な粗さになり、空気を含みやすく、排水もよくなります。ロータリー耕起よりも作業効率がよく、深く起こせます。また、雑草が多くてロータリーでは耕うんしきれないところや土が堅くなっているところは、プラウ耕起が適しています。
ロータリーは日本で普通に耕耘機(こううんき)といえば、ロータリーによる耕耘機を指すほどとてもポピュラーです。ロータリーによる耕起は、砕土効果が高いが深耕効果が低い、地表にまいた堆肥等の撹拌効果が高い、比較的手軽で馬力のあまり大きくないトラクタでも作業可能(ただし燃費は低い)、耕起後の圃場表面は平らになり整地作業が不要といった特徴があります。
動画は、溝曳きプラウといって、前工程でできた溝に片側の車輪を落とし、車体を傾けて作業します。このことで前工程との感覚が一定になり、安定した耕幅が得られます。車輪を溝に落とさず、車体を傾けずに作業する丘曳きプラウは、前工程との間隔を一定に保ち、安定して作業するためには、大きなトラクタが必要になります。丘曳きプラウは、耕幅が2mを超えるものがほとんどで、適応するトラクタも100馬力以上となります。最近は、溝曳き、丘曳き兼用のプラウも販売されているようです。プラウは、反転装置の違いによって、発土板(ボトム)プラウ、ディスクプラウ、チゼルプラウに分けられます。一般的にプラウとは、発土板プラウを指します。発土板とはプラウ本体の金属や樹脂を貼り付けた曲面で、土壌を破砕し反転する効果があります。発土板と付属する部品を総称して「ボトム」(り体)と呼びます。発土板(ボトム)プラウは作業方法の違いによって、ワンウェイプラウ、リバーシブルプラウ、丘曳きプラウ、耕起する深さや使用目的の違いによって水田用プラウ、深耕プラウなどに分類されます。
土作りひとつとってもいろいろな機械や部品を使うのですね。当社は、不耕起播種もできるので、耕起作業を省略することができるのですが、不耕起播種を続けると畑が堅くなってしまい、作物の根張りがよくありません。したがって、数年に1回はプラウで起こします。農業機械、特に圃場機械は農業者を重労働から解放し、生産性を向上させるという重要な役割を果たしてきました。そして、今も進化を続けており、自動運転や作業機の自動制御などが実用段階に入りつつあります。