動画は、飼料用稲の収穫作業を収録したものです。なぜ、水田で家畜の餌を作るのかと疑問に思われる方もいるかと思います。飼料の自給率を向上し、畜産物の安定供給を図るため、日本の環境や国土を守っている水田を減らさないようにするため、国では飼料用米等への転換を推進しています。農家にとっては、主食用米の需要が減少を続けるなか、水田活用の直接支払交付金を活用すれば、主食用米と遜色ない所得の確保も可能なので飼料用米へ転換するところが増えているそうです。
家畜の餌には、とうもろこしなどの穀物を原料とする「濃厚飼料」と、干し草や稲わらなどを原料とする「粗飼料」がありますが、濃厚飼料が特に輸入に頼っており、海外穀物の価格や為替の影響を受けやすく、飼料の自給率向上が必要となっています。水田で栽培する飼料用の稲や米には、用途別に、①粗飼料として、くきや葉を利用する飼料用稲(青刈り稲)、②完熟前の穂、くきや葉を利用する飼料用稲(稲発酵粗飼料=稲WCS)、③濃厚飼料として、実ったもみを使う「飼料用米」にわけられます。青刈り稲や稲WCSには、くきや葉が大きくなる専用品種が使われますが、飼料用米では収穫量の多い専用品種のほか、主食用品種のうち、収穫量が比較的多い品種も使われています。作付面積が急増しているのは「飼料用米」です。
日本では、年々お米の消費量が減っています。この50年間で半分以下にまで減ってしまいました。お米の減少率は、今後も続き、消費量に合わせてお米の作付面積をへらすことが必要となります。このままでは15年後には東海、近畿、中国地方を合計した作付面積に匹敵する30万ヘクタールも減らす必要が出てきます。水田の機能はお米を作るだけではなく、「空気清浄」「温暖化防止」「水資源の確保」「洪水や地すべり防止」など日本の環境や国土を守る役割も持ち合わせています。水田を減らすことは、目に見えないけれども私達を守ってくれる機能を失うことにもなり、影響は農業だけにとどまらなくなってしまうのです。減少する主食用米に代わり、水田を用いて飼料用の稲や米を作付けすることで、これらの機能を維持することができます。また、飼料自給率の向上と畜産物の安定供給も可能になります。
最近では飼料用米で育てたことなどをアピールした肉類や卵が売られていて、お店やインターネットでも買えるようになりました。飼料用米を、餌に混ぜた豚肉は、オレイン酸が増え、旨味など美味しさが増すことがわかってきています。食べた人の感想も「かみごたえがありおいしい」と好評です。また、にわとりでは、飼料用米の割合を高めると、卵の黄身の色がレモンイエローになるほか、生臭さが消え、さっぱりした味になることがわかってきています。日本の環境保護、国土保全だけではなく、畜産物を安定して食べることができるようにするためにも、飼料用の稲や米などを使った畜産物の生産を増やすことが大切となっています。