十五夜

 十五夜は「中秋の名月」とも呼ばれ、「秋の真ん中にでる月」という意味があります。かつて使われていた旧暦では春が1~3月、夏が4~6月、秋が7~9月、冬が10~12月と季節が決まっていました。秋の真ん中は8月、さらに8月の真ん中、15日頃が「中秋の名月」です。現在の新暦は旧暦と1~2ヶ月のずれがあるため、毎年、十五夜の日は違っており、今年は10月1日が十五夜とされていますが、「9月7日から10月8日の間で満月が出る日」を十五夜としています。ちょうど夜は涼しく、空が澄んでいる頃です。旧暦の8月15日は日本の六曜で必ず仏滅にあたることから、「仏滅名月」の別名もあります。

 日本では太古の昔から月を神聖視していたようです。縄文時代には月を愛でる風習があったといわれます。十五夜の月見が盛んになったのは、平安時代で貞観年間(859~877年)頃に中国から伝わり、貴族の間に広まりました。月をみながら酒を酌み交わし、船の上で詩歌や管弦に親しむ風流な催しだったそうです。貴族たちは空を見上げて月を眺めるのではなく、水面や盃の酒に映った月を愛でました。庶民が十五夜を楽しむようになったのは、江戸時代に入ってからだと言われています。貴族のようにただ月を眺めるのではなく、収穫祭や初穂祭の意味合いが大きかったようです。十五夜のころは稲が育ち、まもなく収穫が始まる時期です。無事に収穫できる喜びを分かち合い、感謝する日でもありました。

 地域によって違いがありますが、お月見にはお供えをするのが定番です。ススキは秋の七草のひとつで白い雄花が稲穂に似ている、魔除けになるという理由で供えるようになりました。月見団子は丸い団子を月に見立て、感謝の気持ちを表すそうです。団子の数は十五夜なら15個、ピラミッドのように積んで供えます。これは一番上の団子が霊界との架け橋になると考えられていたからだそうです。里芋、栗、枝豆など収穫されたばかりの農作物を供え、豊作に感謝していたようです。なかでも里芋を供えるのは一般的で、「中秋の名月」は「芋名月」の異名をもちます。お供えだけでなく、独特の風習も各地に伝わっています。秋田県仙北郡では「片足御免」といい、他人の家に片足を踏み込んでお供えを取るくらいは許されるそうです。「お月さまがお供えを食べた」と捉え、喜びます。

 十五夜の日に月見を楽しめるのがベストですが、天候によってはかなわないこともあるでしょう。もともと十五夜は雨の日が多いと言われています。そんなときは、十三夜(じゅうさんや)や十日夜(とうかんや)に月見をしましょう。十三夜は旧暦の9月13日から14日の夜を十三夜といいます。大豆や枝豆、栗を供えることから「豆名月」「栗名月」とも呼ばれます。十五夜と同じように月が美しく、さらに晴れの日が多いそうで、今年は10月29日が十三夜にあたります。十日夜は旧暦10月10日の夜を指します。東日本を中心に収穫祭が行なわれ、地の神様に感謝の気持ちを表します。「田の神様が山に帰る日」とも言われており、この日までに稲刈りを終わらせるところが多いようです。今年の十日夜は11月24日です。十五夜、十三夜、十日夜の3回とも月見をすると縁起がいいそうです。秋の夜長に月見はいかがですか。