秋蕎麦の収穫が真っ盛りです。コンバインでどんどん刈り取っていきます。完全に乾燥していれば茎や葉は外へ排出されますが、美味しい蕎麦にするには実の黒化率70~80%で収穫しなければなりません。収穫のタイミングも大事ですが、蕎麦の畑に水分が残っていると内部の網に茎や葉が詰まってしまい、刈り取りを停止して内部の網を清掃しなければなりません。ここを清掃しないと蕎麦の実の分離能力が落ちてしまうのです。コンバインのドラムは蕎麦の実を落とす突起がある機構となっており、ドラム下部には実と不要物を選別する網があります。同様に不要物がたまりますので清掃が欠かせないです。秋の旬の食べ物「新そば」が味わえるのももうすぐです!高燥冷涼な北上の気候は、蕎麦づくりには最適で良質な蕎麦が育ちます。また、北上の西部は奥羽山脈や川からの良質な水にも恵まれ、おいしい蕎麦処として知られています。みなさん、そば(そば粉)のもとになる蕎麦の実をみたことがありますか?
そばの実は収穫された後、乾燥→選別という工程を経て「玄蕎麦」(殻のついた状態)になりますが、玄蕎麦は、常温だと味が劣化しやすい農産物です。具体的には、そば自身がもつ酵素によって脂質の劣化が進むのだそうです。製粉後は、さらに劣化のスピードが速まります。最近は保存設備も発達し、長期間おいしいそばが食べられるようになりましたが、それでも収穫したばかりのそばは別格で新鮮そのものの美味しさがあります。夏の太陽をたっぷりと浴びて育った新そばは、十分に育って、豊かな実を付けます。緑がかった色、胸のすくような香り、爽快なのどごしなどは、新そばならではの味わいですね。つるっとのどごしを楽しむのも粋で良いですが、新そばをゆっくり味わうのもおすすめです。
岩手県のそばは、日本三大そば処のひとつとして名物のわんこそばが有名です。発祥は盛岡説と花巻説がありますが、そんなことはどうでも良いくらい、岩手県はそば処として県内各地においしい蕎麦屋さんがたくさんあります。盛岡のわんこそば老舗の「東家」さんでは、40年近く料理の道を続けてきた料理長が長時間にわたって仕込んだこだわりの出汁と、つるっとのどごしのそばが自慢で岩手でしか味わえないおもてなしの心を感じることができます。盛出し式平泉わんこそばの元祖「駅前芭蕉館」さんでは薬味たっぷりのわんこそばが楽しめます。また、水沢の「蕎麦屋二想」さんは本わさびの香り高い本格蕎麦が楽しめます。江釣子ショッピングセンターPAL内にある、県南の小山製麺の直営店「そば処 小山」さんは製麺所のこだわりのそばが楽しめます。上盛岡にある「ぽらあの 雪峰庵」さんは化学調味料を一切使わない、じっくり煮込んだこだわりの出汁で健康志向のそばが楽しめます。わんこそばだけではない、いろいろな特徴をもった岩手県の蕎麦が楽しめるところが他にもいっぱいあります。
ここ岩手県北上市もそばに力を入れています。「きたかみ蕎麦」といって、2種類の手打ちそば(男性職人が打つ黒い粗挽き十割と、女性職人が打つ白い細挽き十割)をひとつの器に盛り付けた蕎麦があります。地元の農家が栽培した玄蕎麦、そば粉を100%使用しています。「鬼の館」の敷地内にある「神楽屋」さんでは、この「きたかみ蕎麦」をタレと岩塩の二種類で味わえますが、岩塩で蕎麦の味と香りをストレートに楽しめますのでおすすめです。粗挽き十割は殻入りの粗挽き粉で打った麺で、粗挽きならではの香りと食感をより楽しめます。細挽き十割の方は女性のそば打ち職人が打った十割そばで、殻をむいたそばの実を店内の石臼でゆっくり少量ずつ挽いた細挽き粉を使用した、白っぽいそば麺となっています。食べ比べてみるとそばの味わい深さがみえてきます。隣町の西和賀町や花巻市もそばの振興にかなり力を入れており、こうした岩手県内のそばに対する切磋琢磨もおいしい蕎麦処をつくる下地になっているのでしょうね。今年の新そばをいただくことができるのももうすぐです!