全国和牛能力共進会(略称:全共)は、和牛の能力と斉一性の向上を目指して開催される共進会(牛の優劣を競う会)です。5年に1回の開催なので和牛のオリンピックとも言われ、来年の10月に第12回大会が鹿児島で開催されます。日常の登録事業を通じて、それぞれの時代の要求に応じた形で和牛改良を進めていくため、改良上の狙いを出品区の設定に盛り込み、本共進会に取り組むことにより、将来につながる優秀な素材を生産及び発掘し、これを出品展示することによってその成果を確認し、全共後に引き継いでいくことに狙いがあります。そのため、本共進会では、開催の狙いに基づくテーマを掲げ、その実現に努めてきました。これまでの共進会では昭和41年の第1回の岡山で開催された「和牛は肉用牛たりうるか」から始まり、前回の平成29年の宮城で開催された「高めよう生産力 伝えよう和牛力 明日へつなぐ和牛生産」まで毎回テーマが設定され、それぞれ所期の成果を収めてきました。
前回大会では、第10回大会で掲げた「和牛維新」の達成を目指し、全国の繁殖雌牛の平均分娩間隔400日以内を目標に、育種価を活用した分娩間隔の短縮や種牛能力の高い雌牛の地域内保留による生産基盤の強化に取り組んできました。同時に、遺伝的多様性の維持・拡大のため、地域の特色ある牛づくりの取り組みを強化するとともに、「風土の産物」とも呼ばれる和牛の魅力の発信に努めてきました。そのひとつとして、和牛肉の「美味しさ」を新たな角度から見つめ直す取り組みも行われてきました。育種価評価事業により、和牛の産肉能力、特に脂肪交雑については飛躍的に向上してきたことも踏まえ、新たな改良指標として、美味しさに関係する「脂肪の質」に着目し、客観的評価手法の確立と普及に取り組み、遺伝的能力評価に向けた体制づくりにも着手しています。今回は、これらの成果をより確実なものとしていくこととし、開催テーマを「和牛新時代 地域かがやく和牛力」として取り組むことになります。
それぞれの地域の飼育環境に適応し、地域で代々保留されてきた特色ある遺伝資源を発掘し、活用していくことは、種牛能力の改良はもちろん、遺伝的多様性の維持・拡大にもつながり、将来の和牛生産と改良を担保するための重要な取り組みとなります。そこで、これまで各地で進められてきた系統再構築や地域の特色ある牛づくりをさらに充実させていくとともに、新たな系統や育種素材の発掘も行い、それぞれの地域に固有の遺伝資源の確保と活用を進めていきます。このような取り組みにより、全国で多様な遺伝資源を確保するとともに、系統の特色を遺伝的に固定し、魅力ある集団の構築につなげていくようです。
歩留に代表される肉量と、脂肪交雑に代表される肉質については、遺伝的能力と肥育技術の向上により、高いレベルに到達しました。今後は、生産、流通、消費の動向を見据えて、効率的な牛肉生産に加え、食味性の向上に重点をおいた遺伝的改良と飼養管理技術の研鑽が求められています。和牛独特の風味があり、口溶けが良く、食味性の向上が期待される「脂肪の質」の改良体制の構築も促していきます。また、牛肉の一般成分としての水分、脂肪、タンパク質のバランスも和牛肉の美味しさに関連していることから、和牛肉の新しい価値観の創造につながるような、適度な脂肪含量で、交雑脂肪の形状も考慮した評価を追求しています。和牛は歴史と風土に培われた我が国固有の財産であり、日本の食文化を代表する食材として、国内外から高く評価されています。こうした評価を確かなものにするには、現状に留まることなく、常に成長と発展が求められています。本共進会を通じて、生産、流通、消費が相互に理解を深めつつ、ともに和牛の魅力の向上を考える契機となるよう臨んでいます。食料、資源をめぐる動きが世界的規模となり、さらに厳しさを増すなか、和牛が我が国の食と農を支える基幹産業として、将来にわたる成長を実現するために、繁殖、肥育両面から生産効率を向上させ、さらなる和牛の魅力向上と発信を目指しています。弊社は今回も、本共進会に出品すべく、肥育牛の部に4頭を出品、岩手県の一次審査会に臨み、4頭とも岩手県代表の候補牛として合格となりました。これから二次審査、本共進会に出品審査となる来年に向けてこの4頭を肥育していきます。きたかみ牛が全国区で有名になるよう祈っています。